「大江戸落語百景猫見酒」風野真知雄著
築地の裏通りでうなぎ屋を営む長八は、3日ぶりに店を開ける。店は繁盛しており、行列ができるほどだ。体もいたって元気なのに、店を開けなかったのは、突然、うなぎをさばくことができなくなってしまったからだ。3日前の朝、いけすの中のうなぎと目が合い、その顔を見ているうちにかわいく思えてきて、手が動かなくなってしまったのだ。このままではおまんまの食い上げだと、菩提寺の和尚に相談すると、いっそのこと、割いたり、切ったりせずに丸焼きのまま出したらどうかという。試しにやってみると……。(「ご天寿うなぎ」)
その他、迷い込んできた猫を追いかけながら「猫見酒」をしゃれ込む酔っぱらいたちを描いた表題作など、さげが効いた10席の読む落語集。
(徳間書店 640円+税)