「このひとすじにつながりて」ドナルド・キーン著、金関寿夫訳
今年2月、惜しまれつつ亡くなった著者が自らの前半生をつづった自伝。
1941年、コロンビア大学の学生だった19歳の氏は中国人同級生から中国語を学んでいた。しかし、ある日、図書館で見知らぬ男性から声をかけられ、夏休みに彼の別荘で日本語を学ばないかと誘われる。小さな村にあるその別荘で最初に覚えた日本語は「サクランボ」だったという。さらに日本語を学ぶため、海軍の日本語学校に進み、戦時下で日本軍の書類や戦死した日本軍兵士の日記の翻訳などを担当。さらに通訳として激戦下の沖縄に赴任する。友人となった当時の日本人捕虜らとは今でも交流が続いているという。そんな激動の戦中から、戦後の日本留学、そして日本研究者として歩み始めるまでの日々を克明につづる。
(朝日新聞出版 780円+税)