「椎名誠[北政府]コレクション」椎名誠著
「私」は「猫舐祭」のことを問われ、語り出す。それが私の役目だからだ。猫舐祭は、北の政府軍との戦争が終わって数年後、まだ子供だった私の一番の楽しみだった。祭りになると、町の一角に色とりどりのテント小屋が並び、カエルほどの大きさの「虫男」など、遺伝子急速改造で作られた生き物たちが呼び込みを務めていた。闇の臓器マーケットもあり、人気小屋では知能を持った虫「繭巻き」などの人間との獣合一体化生物や、「南天」と呼ばれる有機物の工作機械などが見せ物にされていた。最大のイベントは「トゴス」と呼ばれる獣人と人間を機械で強化した改造人間との戦いだ。(「猫舐祭」)
戦争終結後の近未来の世界を舞台にした「北政府もの」と呼ばれる作品群を編んだ短編集。
(集英社 620円+税)