「株式会社ネバーラ北関東支社」 瀧羽麻子著

公開日: 更新日:

 かつて終身雇用制が当たり前だった時代には、転職に対してネガティブなイメージがつきまとっていたが、いまや20代では7割近くが転職をポジティブに捉えている。また企業の方でも中途採用に積極的な姿勢を示しているところが増えているという。転職の理由としては、「ほかにやりたい仕事がある」「給与に不満がある」「会社の将来性が不安」などが上位を占めているが、本書の主人公の転職理由は、戦場のような東京の職場から離れて、地方の田舎町でゆるい生活をしたかったからだ。

【あらすじ】東京の外資系証券会社のマネジャーとして仕事に打ち込んでいた弥生は、同期の恋人にフラれたことをきっかけに生き方を見直すことにした。

 そこで選んだのが、売り上げの8割を納豆が占めるという健康食品の下請けメーカー、ネバーラの北関東支社。弥生が配属された経営企画部は、正社員は弥生を含め3人とパート2人の小さな所帯。定時の出退勤で、たまに会社の近所にある居酒屋「なにわ」で店主の桃子と酒を酌み交わすといった、望み通りのんびりした毎日を過ごしていた。

 そこへ、ネバーラが乗っ取られるといううわさが耳に入ってきた。それまでは仕事を適当にこなしていた弥生だが、この危機を救うべく、消費者向けの情報発信ブログの立ち上げを提案する。他のスタッフも賛同して企画を練り上げ、取引先へ共同企画を持ちかけることに。ところが、あろうことか、弥生たちの企画は……。

【読みどころ】仕事と恋に疲れたアラサー女子が自らの生きる場所を求めて地方へ転職し、生き方を見つめ直すという再生の物語。仕事が忙しくて余裕をなくし、疲れ果てている人には、特効薬になるだろう。<石>

(幻冬舎 533円+税)

【連載】文庫で読む傑作お仕事小説

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…