「WOMEN 女性たちの世界史大図鑑」ルーシー・ワーズリー序文 ホーリー・ハールバート他監修 戸矢理衣奈日本語版監修 戸田早紀ほか訳
ここ数年の研究で、新石器時代は母系社会で、家族の長を女性が務め、リーダー的役割を果たしていたという説が浮上しているそうだ。しかし、それ以降、現在まで世界的に家父長制(男性優位)の社会が営々と続いてきた。本書は、これまで無視され、封印されてきた女性が直面してきた抵抗の歴史や、乗り越えてきた障害の数々をテーマに人類史を新たな視点でおさらいする歴史図鑑。
古代文明社会では、女性の多くは男性よりもはるかに限られた自由しか与えられていなかったが、古代ギリシャにはアポロ神に代わって神託を伝えるピューティアーと呼ばれる強大な権力を持つ巫女たちがいたという。他にも、広大な土地や個人的な財産を所有するなど経済的自由を持っていた古代ペルシャの上流階級の女性たち、ニュージーランドの先住民マオリの男女平等思想が入植してきたヨーロッパ人に後進的で野蛮だと見なされ、マオリ女性が植民地化によって対等な地位を失ってしまった逆説的な事例や、人種差別に加え性的暴行などの女性差別にも苦しめられたアフリカ人奴隷の実態、「1929年女性戦争」と後に呼ばれる植民者の迫害に対抗したナイジェリアの女性たちの反乱、インターネットというツールを手にして「ガラスの天井」を打ち破るために連携し現状に抗議する現代の女性たちの戦いまで。知られざる女性たちの歴史を掘り起こし伝える。
そうした中でも男たちと同等に、あるときはそれ以上の功績を残してきた偉大な女性たち600人の人生も紹介。
女性の地位は常に向上の一途をたどってきたわけではない。前進と後退を繰り返しながら現在に至る女性たちの歩みを迫力あるビジュアルでたどる新感覚図鑑だ。
(河出書房新社 4500円+税)