「韓国ナショナリズムの起源」朴裕河著 安宇植訳
民主化を果たした後の1990年代、韓国で台頭したナショナリズムについて分析した韓国本。ベストセラー「帝国の慰安婦」の著者が20年前に発表した問題作だ。
まずは90年代の韓国で反日意識を高めることに最も寄与したという「鉄杭」事件について考察。これは、風水侵略をもくろんだ日本が、朝鮮民族の「精気」を断ち切るために半島の津々浦々に鉄杭を打ち込んだというもの。それを掘り出す運動は、金泳三政権の「民族の精気を取り戻そう」というスローガンと結びつき、国民的運動にまで広がったという。
さらに旧朝鮮総督府庁舎の取り壊しなど、さまざまな視点から過去を否定しようとするばかりで直視しようとしなかった当時の韓国社会を冷静に見つめる。
(河出書房新社 980円+税)