「金閣を焼かなければならぬ」内海健著
昭和25年7月2日、金閣寺が学僧、林養賢によって放火され、焼失した。警察の調書には、「美に対する嫉妬の考へから焼いた」とあり、これが放火の動機として独り歩きするようになった。京大の三浦百重教授は、養賢は分裂病ではなく、軽度の性格異常による強い思い込みから犯行に至ったと診断した。養賢に明確な分裂病の症状が表れたのは放火から7カ月後である。養賢は金閣で焼け死のうとしたが、鍵が開かない。炎の勢いに恐怖を感じ、我に返って逃げ出した。この事件を題材にした三島由紀夫の「金閣寺」でも、その「反転」が描かれている。
金閣寺放火事件を、精神科医が精神病理学の視点から読み解く。
(河出書房新社 2400円+税)