「リベラルの敵はリベラルにあり」倉持麟太郎著
弁護士の著者は2015年、安倍政権下の安保法制の審議に関わった際に、憲法に象徴されるリベラルな価値への確信を心に秘めて論戦に臨んだ。だが、その思いはあっさりと砕け散った。その体験から「リベラルの敵はリベラルにある」との確信に至ったという。
なぜなら、リベラルはその初期設定において「合理的で強い」個人を前提にするが、生身の人間は時に不合理な選択もする、説明のつかないはかなさや弱さを内包した存在である。さらにリベラルは自陣のロジックの正しさを、そのロジックが唯一絶対の正解であるかのごとく「上から目線」で語り続けるばかりで、生活者には届かない。
政治を乗りこなすための羅針盤として、風前のともしびのリベラルな価値観を再生するための論考。
(筑摩書房 1100円+税)