「作家の手料理」野村麻里編
映画監督の小津安二郎は毎日の食事を丹念に日記に記している。鮭の酒粕汁が大好物で、昭和30年1月17日は「夜、鮭粕汁をつくる。美味。」とあり、1月22日は「朝、鮭粕汁を拵える。美味。」、2月1日は「鮭粕汁にて夕めし。」とあるから、かなりの頻度である。
この頃は、名作「東京物語」を送り出した2年後で、脂の乗りきった頃だが、独身の小津は自分で鮭の粕汁を作ったのだろうか。〈「B級グルメ考」山田風太郎〉
ほかに、小学校3年のとき、ロシア人の友達にもらった飴「ハルヴァ」の味が忘れられず探し続けた、米原万里の「トルコ蜜飴の版図」など、30人の作家が出合ったおいしいもののレシピつきエッセー集。
(平凡社 1980円)