「かぞえきれない星の、その次の星」重松清著
かえる神社の年越しの神事は、カエルの置物の背中に置いた短冊に、「こうあってほしい」という願いではなく、「これ、なかったことにできませんか」という願い事を書く。ひっくり返るにあやかっているのだ。
9年前の大晦日には、短冊が重なり合うほど詰めてカエルが置かれた。地震と津波で壊れた発電所が危険なエネルギーの毒素をまき散らしたからだ。その年はまだ幼い子どもの字で「3月11日」とだけ書いた短冊があった。今年は2年参りが中止になり、「2020」とだけ書いた短冊があった。つまり去年1年をまるごとなかったことにしたいのだ。
小さな星のような11の物語を載せた短編集。
(KADOKAWA 1870円)