「孤独の教え」ヘンリー・D・ソロー著 坂東智子訳
ソローは一人でいるのが好きだ。誰かと一緒にいるとすぐ疲れて時間を浪費してしまう。人が考えごとをしたり、何かの作業をしているときは決まって一人だが、そういうときより孤独を感じるのは、人びとに囲まれているときだ。
その人が「孤独」かどうかは、その人と周囲の人との物理的な距離では判断できない。
ソローの住まいは人がめったに訪れない、数平方キロの森に囲まれている。プライバシーを守るためだが、隣の家とは1.6キロ離れていて、遠くのほうに湖に沿った鉄道や森の中の車道のフェンスが見える。
大草原に住んでいるのと変わらない人里離れた地で、自分だけの太陽や月、星、自分だけの小さな世界を持っているようなものだ。
「ウォールデン 森の生活」で大きな影響を与えたソローの「孤独」というものの捉え方を紹介する一冊。
(興陽館 1430円)