「金剛の塔」木下昌輝著
大手ハウスメーカーの設計士だった悠は、激務に耐えられず退社して大阪に帰郷。幼い頃によく通った四天王寺の五重塔は、今はコンクリート製だが、百済から渡来した金剛重光によって建てられ、兵火雷火によって7度も破壊されながら、そのたびに蘇った宝塔だ。 その境内で悠は、かつてよく遊んでもらった堂宮(寺社)の大工・崇史と再会する。悠が建築を志したのは堂宮の職人たちに憧れたからであった。崇史は、四天王寺で金剛の時代から1400年続く大工集団、魂剛組の棟梁の一人になっていた。悠は崇史に誘われ魂剛組で見習いとして働き始める。
現代から安土桃山、平安、江戸、そして聖徳太子の御世と時代を行き来しながら宝塔を支える「心柱構造」の誕生と継承を描く長編時代小説。 (徳間書店 880円)