「若き日に薔薇を摘め」 瀬戸内寂聴 藤原新也著
一昨年に亡くなった寂聴氏が生前、旧知の写真家・作家の藤原氏と交わした往復書簡集。
書簡は2008年秋、藤原氏が寂聴氏に連れられ京都・祇園のお茶屋で過ごした夜を思い出し、女将への印象や、居合わせた芸妓に聞かせてもらった笛の音についてつづった便りから始まる。
寂聴氏は返信で2人で訪ねたお茶屋の先代女将と、彼女の情人、そして現女将にまつわる因縁や、そうした人々をモデルに描いた自らの小説、さらに当日笛を吹いた芸妓がその小説を読んで舞妓になったなどの裏話を明かす。
寂聴氏が正体を隠してつづり人気を呼んだケータイ小説や忍び寄る老い、家族、そして死まで、縦横無尽の話題を紡ぎながら2年間で交わされた29通の書簡を収録。
(河出書房新社 1045円)