「教養としての上級語彙」宮崎哲弥著
一時、「ボキャ貧」がはやったが、その対義語として「ボキャ富」が考えられる。だが、語彙が豊かであることを褒める言葉を聞いたことはない。語彙が豊富なことが評価されないのは据わりの悪い話だ。
以前、著者が「上木(じょうぼく)」という言葉を使ったら「上梓」の誤植だと思われてしまった。どちらも本を出版する意だが、なぜか難しい言葉の「上梓」のほうが一般的だ。出版することを「上梓」というのは、版木として梓材が用いられたことによる。どれだけ多くの言葉を使いこなせるかが、その人の思考の分明さや複雑さを表している。
ほかに「謦咳(けいがい)に接する」「久闊(きゅうかつ)を叙する」など、表現力、思考力を高める500語を紹介する。 (新潮社 1650円)