「潮風の下で」レイチェル・カーソン著 上遠恵子訳
世界に先駆け環境問題に警告を発した「沈黙の春」の著者が、海とそこに暮らす生き物たちの魅力をつづった名著の復刊。
たそがれ、奇妙な鳥たちが砂州の外の営巣地からその島にやってきた。真っ黒な翼を広げると人が広げた両腕よりも長いその鳥たちは、クロハサミアジサシの「リンコプス」だ。越冬地のユカタン半島から北へ旅してきた彼らは、入り江の砂州や外海の海岸でひなを育てる。
闇は深まり、潮が満ちてくると、産卵を終えたイリエガメがするりと水中に入ってきた。水路の深いところでは多くの魚が泳いでいる。産卵のため海から戻ってきたシャッド(ニシンの仲間)だ。
こうした海辺から、大海原、そして深海へと読者をいざないながら、そこに暮らす多くの生き物たちの姿を描き出す。
(山と溪谷社 1210円)