「無用の効用」ヌッチョ・オルディネ著 栗原俊秀訳
「無用の効用」ヌッチョ・オルディネ著 栗原俊秀訳
今の社会では人文学のような利潤を生まない知識を「役立たず」ととらえがちだが、著者は「知ること」そのものが目的であるような知識がどう「役に立つ」のかを明らかにしようとしている。
たとえば、あのドン・キホーテこそ「役に立たない」ことの英雄である。彼の行動は「無私の精神」から来ているが、失敗することが分かっている試みであっても、勇気をもって取り組まなくてはならないことを教えている。この世には、遠い未来に偉大なものをもたらす可能性をもつ「栄光に輝く敗北」があるのだから。
ほかに、ヘルツの電磁波の研究がラジオの発明につながったなど、一見、無用に見えるものの価値について考察した一冊。
(河出書房新社 2475円)