「ムラブリ」伊藤雄馬著
「ムラブリ」伊藤雄馬著
言語学者である著者は、ある日、テレビ番組「世界ウルルン滞在記」でタイやラオスの山岳地帯に住む少数民族、ムラブリを知り、フィールドワークをすることに。ムラブリは森に住む狩猟採集民である。
ムラブリ語の感情表現はユニークで、「クロル クン(心が上がる)」「クロル ジュール(心が下がる)」という言い方をするが、「心が上がる」は「悲しい」とか「怒り」を表し、「心が下がる」は「うれしい」とか「楽しい」を意味する。彼らにとって感情を表すのはよいことではないので「心が上がる」ことを避けるべきことと考えても不思議ではない。
言語学者が文字も暦ももたない人々から教わった自由、言葉、幸福などについてつづる異端の言語学ノンフィクション。 (集英社インターナショナル 1980円)