「ピリカチカッポ」石村博子著
1903年、北海道に生まれた知里幸恵は、母方の祖母に育てられ、祖母からアイヌの神謡や英雄詞曲を伝えるユカラを教えられる。幸恵はアイヌの子どものための小学校に通うが、当時の学校ではアイヌ語は禁止されていた。
幸恵は旭川で聖公会の伝道師をしていた伯母の元に移り、1918年の夏、教会を訪れた言語学者の金田一京助と出会う。金田一はユカラが浄瑠璃などの散文と違う叙事詩であると直感する。金田一の助力を得て、幸恵は「アイヌ神謡集」を著すが、いつしか忘れられていった。
ところが、1973年、藤本英夫が幸恵の評伝「銀のしずく降る降る」を出版したことで再び脚光を浴びる。
ユカラを伝えて19歳で死んだ女性の記録。
(岩波書店 1980円)