「異性装」中根千絵ほか著
「異性装」中根千絵ほか著
男装や女装などの「異性装」が物語や芸能に描かれる場合、そこには性を重ねても、どちらかを選ばざるをえない悲しみやどちらの人生も謳歌する生きる喜びなどの感情、あるいは不条理な社会を風刺する視点が存在する。
本書は、異性装の人物が古典文学や伝統芸能で、どのように描かれてきたかを読み解いた論考集。
武装する形で男装する日本神話のアマテラスや、女装を手段として用いたヤマトタケル、兄妹が入れ替わってしまう「とりかへばや物語」、さらに歌舞伎「三人吉三」やシェークスピアの「ベニスの商人」など。
各作品で主人公が異性装によってそれぞれの性のジェンダーの縛りからどのように解放され、どのような結末を迎えるのかを論じながら、現代のカルチャーに与えた影響を考察する。
(集英社インターナショナル 1023円)