「幽玄F」佐藤究著
「幽玄F」佐藤究著
空を飛ぶジェット機を追いかけてどこまでも走って行く。そんな噂が流れるほど、易永透は飛行機好きだった。
11歳のとき、父と一緒に初めて飛行機に乗った。通路を歩いていて客室乗務員に声をかけられた透は「コックピットを見せてほしいんです」と言った。結局客席に連れ戻されたのだが、飛行機を降りるとき、その客室乗務員が、機長からのプレゼントだとカレンダーを渡した。「コックピットの写真がありますよ」と。
到着ロビーを歩きながらカレンダーを広げた透は、コックピットの写真に機長の走り書きがあるのに気づいた。
「CLEARED FOR TAKEOFF(離陸を許可する)」
後に航空宇宙自衛隊員となり、戦闘機F-35Bで垂直離陸に挑戦するパイロットを描く長編小説。 (河出書房新社 1870円)