「考える粘菌」中垣俊之著
「考える粘菌」中垣俊之著
ヒトの能力のひとつは「ややこしくて困難な状況であっても、生き抜くための行動がとれる」こと。これをある種の知性ととらえるなら、ヒト以外の生物も、その生息環境でどのような行動をとるか調べることで、知的レベルを推し量れることになる。それを単細胞生物に適用して、その行動を研究した学者たちは、すでに100年前にいたという。
著者らは原生生物の一種である粘菌という巨大なアメーバに注目。ひとつの細胞からなる単細胞生物の粘菌に、迷路を最短ルートで解く能力や、鉄道網と同様の機能性を持った輸送ネットワークを構築する能力があることを突き止め、発表してきた。
こうした研究の実際を紹介しながら、「生きものが知的であるとはどういうことなのか」を考察した科学テキスト。 (山と溪谷社 880円)