「昆虫学者はやめられない」小松貴著
幼少期に育った静岡でも、小学生のときに移り住んだ群馬の僻地でも、成人した今でも、「思い出の要所要所に必ずカエルの存在がねじ込まれてきたように思う」という著者。カエルはどこででも、夜の森での楽しい遊び相手。
近寄って一斉に鳴きやんだら、その場で足踏みをして、だんだん足踏みを小さくしていくと人が立ち去ったようにかん違いして、再び鳴き始める。それを繰り返して徐々に近づいてカエルを捕まえるのだ。
驚異の観察眼の持ち主にして、2014年に上梓した「裏山の奇人―野にたゆたう博物学」で、南方熊楠の再来と注目された著者が、新潮社Webに連載した「『裏山の奇人』徘徊の記」を書籍用に再編集した自然の博物誌である。
(新潮社 1400円+税)