「戦後政治と温泉」原武史著
「戦後政治と温泉」原武史著
1955年8月19日、第2次鳩山内閣の重光葵外相は、閣議で訪米の了承を得た。目的は日米安全保障条約の改定を訴え、駐留米軍の撤退を迫ることである。
本来なら鳩山と重光の会談は官邸で行われるが、このとき、鳩山一郎は軽井沢の別邸にいたため、重光は軽井沢に向かった。重光は翌日、那須の御用邸に赴いて昭和天皇に奏上する。
さらに21日には、箱根に滞在していた吉田茂に会う。軽井沢は別荘族同士が行き来しやすく、箱根は温泉付きの別荘やホテルがあって、政治家が籠もるのに便利だった。吉田茂がサンフランシスコ講和会議の前に籠もったのも箱根だった。
温泉地が政治空間として使われた背景を探る。
(中央公論新社 2200円)