「赤と青とエスキース」青山美智子著
「赤と青とエスキース」青山美智子著
メルボルンに留学中の「私」は、現地在住の日本人と知り合い、帰国するまでの期限付きで交際を始める。自称「ブー」と名乗る彼は、名前にちなんで私を「レイ」と呼ぶ。メルボルンで画商をしている両親のもとで育ったブーは、日本に行ったことがないという。大学でも友人をつくれず、孤独な日々を送っていた私は、お調子者のブーの明るさに救われる。
しかし、別れの日は刻々と近づいてくる。帰国が数日後に迫ったある日、私はブーに頼まれ、彼の友人の画家の卵・ジャックのモデルを務める。下絵(エスキース)にとりかかったジャックの前で椅子に座り、立ち会ったブーと視線を交わす私の脳裏にさまざまな思いが湧きあがる。
「エスキース」と題された一枚の絵に紡がれた男女の人生を描く連作集。
(PHP研究所 858円)