「日本の妖怪たち」阿部正路著
「日本の妖怪たち」阿部正路著
妖怪は「すべて、人間の果てである」と説く著者が、古代から現代までの日本における妖怪文化を俯瞰した通史。
そもそも妖怪とは何か。妖怪の発生は、英雄を待望する民衆の心の痛々しい挫折感に基づく「いわば民衆の見果てぬ夢のまがまがしくねばり強い幻なのだ」という。
百鬼夜行を視覚化した鳥山石燕の「画図百鬼夜行」など、日本の妖怪が絵の中に定着するのは寛政期から幕末期にかけてであり、それまでは「言霊」の中にこそ存在していた。視覚的世界に定着したことにより、日本の妖怪はいっそう残忍に、そして怪奇じみた姿を示すようになったという。
古事記などの古典から、国学者の平田篤胤、森鴎外ら近代の作家、さらに水木しげるや手塚治虫まで、独自の視点で妖怪とその歴史を語る。
(KADOKAWA 1386円)