宇能鴻一郎「むちむちプリン」(徳間文庫・2016年2月15日発行から)

公開日: 更新日:

【あらすじ】 あたしって、いけない女なんです。やさしい愛する夫というものがありながら……。
 だって、弱いんです。主人ったら。まだそんな年でもないのに。女ざかりの、あたしのからだを、満たしてくれないんです。だから、主人の会社の人、若い運転士、絵画教室の先生……みんなあたしのからだにひきつけられて。誘惑されると、いけないと思いながらも、つい、あたしって。
 みずみずしさにあふれた女性の一人称小説。7編収録。

 とつぜん、カレ、身を起こした。

 あたしのオーバーとスカートをかきわけて、頭を、押し入れてきたんです。

 あたしの、逞しいヒザ頭のあいだに。

 あたしの上半身を、ベッドに押し倒して。

 あそこを、完全に自分の方に、むけて。

 あっ

 カレいきなり……。

 強いわ。

 でも、感じる。

 ああ

 この人、舌を……。

 あたし、

「イヤ、イヤ、止めて」

 といいながら、この人のおデコを押したんだけど。

 でも、この人の、首の力って、すごく、強いんです。

 ムリヤリ、に。

「いけないわ。いけません……主人に、言います」

 といったんだけど、この人、

「お言いなさい」

 といっただけ。

 ああ

 この人、とても、おいしそうに。

 唇で、遊んでるんです。

 匂いや、独特の味がするんじゃないかしら。

 でも、その匂いや味で、かえってコーフンする男性がいるって、聞いたこともあるんだけれど。

 いい、気持。

 思わず、あたし、こすりつけるように、しちゃった。

 するとこの人、張り合いが出てきたのか、いっそう、はげしく。

 あたし、つい声を出しちゃった。(略)

 そして、やおら、という感じで、あたしに、かぶさってきたんです。

 足は、床の上においたまま、そして、あたしには、オーバーとスカートをつけさせたまま。

 無意識にあたし、体をもちあげてた。(略)

 あたし、一気に、

 奥まで貫通されたんです。 構成・小石川ワタル

▽うの・こういちろう 1934年、札幌市生まれ。東京大学国文科卒、同大大学院博士課程満期退学。1962年、「鯨神」で第46回芥川賞受賞。その後、「あたし~なんです」というヒロインの独白調の文体で本紙およびスポーツ紙などの連載で大活躍し一時代を築く。85歳。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…