島倉千代子や吉永小百合が巻き込まれた草加次郎事件
<1962年11月>
島倉千代子が純情歌手として大人気だった62年11月。連続無差別脅迫テロの発端となる事件が起きた。
4日、島倉の後援会事務所は2週間後に浅草で開催されるリサイタル申し込みの郵便物処理に追われていた。11時半、後援会幹事を務める23歳の男性が申し込みの封筒にしては分厚い、1通の手紙を取り上げた。差出人の名はなく、開いてみると刀をさやに収めたような形にボール紙を組み合わせたものが入っていた。表に「祝」と「呪」、裏には「K」と「草加次郎」の文字があった。
男性は「何だ、こんなもの。いつものイタズラかもしれないな」と、女子事務員たちに見せながらボール紙を引っ張って開けようとした。
そのとき、シュッ、シュッと鈍い音がして、事務所いっぱいに白煙が広がった。火薬のにおいが立ち込め、男性は「熱い」と叫び、郵便物を取り落とした。幸い大事には至らなかったが、右手の親指と人さし指に2週間のやけどを負った。
封筒には火薬10グラムが入っており、ケースを引き抜くとマッチの棒がこすれて引火するように仕組まれていた。事務員たちは「島倉さんに対する嫌がらせなら、なぜ自宅に送らないんでしょうね。(事務所に届いても)どうせ私たちが開けるとわかっているのに」と不審がった。