「テロメア」の保護には栄養素をバランス良く腹八分目の食事を
前回は細胞の周りを取り巻く内部環境と、「テロメア」を守るための呼吸について取り上げた。今回は「食事」について考えたい。
テロメアとは遺伝子が折りたたまれた染色体を、両端で保護する働きをする構造物のこと。細胞分裂するたびに短くなることから「命の回数券」と呼ばれる。実際、50代で同世代よりもテロメアが短い人は通常の人より心筋梗塞や脳卒中リスクが3倍高くなり、死亡リスクが高いとの報告もある。健康長寿を維持するにはその維持が欠かせない。どんな食事をすればいいのか? ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師に聞いた。
「私たちの身体は約60兆個の細胞からなり、平均すれば1日約1兆個の細胞が入れ替わります。例えば小腸上皮細胞は約1日、皮膚の細胞は約28日、赤血球は約120日で生まれ変わるのです。そのすべては食べたものが材料で、活動するためのエネルギー、さらに身体を円滑に動かすための生理活性物質などにも使われます。ですからまず、人は栄養素をバランス良くとることが大切です」
栄養とは、生物が外界から得た食べ物により成長し、活力を維持していく身体の営み(消化・吸収・運搬・合成・排泄など)そのものを指す。そのもとになる物質が栄養素で、タンパク質、脂質、炭水化物(糖質)、ビタミン(有機物)、ミネラル(無機物)を5大栄養素と言う。