作曲家・都倉俊一さんの流儀 「オンザロックで最終確認」
レコーディングがない日はない日で毎日のように締め切りに追われ、自宅スタジオでピアノを弾きながら譜面に向かっていました。やはり納品は翌朝9時。目標は未明の4時とか4時半で、その時間に写譜屋さんといって僕が書いた譜面をオーケストラ用のパート譜に書き写してくれる専門家が来る。それまでが勝負で9割とか9割5分仕上がったところで、ウイスキーをオンザロックで飲みながら最終確認をするのが僕の流儀でした。
今の時季は外はまだ真っ暗ですけど、初夏なら4時すぎからだんだん東の空が白み始めます。窓越しにそれを見ながら飲む一杯。蒸留酒はあまり口にしないけど、この時だけはビールではなくウイスキー。アルコール度数的にも喉や胃への刺激からも、強い方がよかったんです。
というのは、頭をかきむしるくらいの勢いで譜面に向かっていると、アドレナリンの分泌も増えて、神経がピリピリと高ぶるでしょ。それをクールダウンしなくてはとてもじゃないけど眠れなかった。グラスを傾けるとカラン、コロンと氷が転がり、乾いた音が響くのも心地よくてね。随分と癒やされましたよ。