伊東ゆかりさん つらい時おいおい泣きながら聴いた「ボーイ・ハント」
「小指の想い出」大ヒットの真相
ビックリしたのは現地に着いた時。取材の人に「コニー・フランシスさんと写真を撮ります」と言われ、まさかコニーさんと会えるとは思っていなかったから。コニーさんとはホテルも同じで、地下のプールサイドに行って、大好きなアイスクリームを一緒に食べている写真が今も残っています。彼女は映画の「ボーイハント」そのままって感じ。笑顔がとてもかわいい人でした。今から思えば、サインをもらっておけばよかったと後悔しています。
サンレモ音楽祭ではコニーさんと一緒のステージに立つことができ、私は振り袖を着て「恋する瞳」を歌い、日本人で初めて入賞しました。あの時の感激は今も忘れることができません。
「ボーイ・ハント」は92年の紅白で歌っています。石田ひかりさんがヒロインを演じた朝ドラ「ひらり」で、私がお母さんを演じた年です。てっきり「小指の想い出」を歌うのかと思っていたら、プロデューサーに「オールディーズの曲を歌ってほしい。ぜひ、『ボーイ・ハント』を」と提案され、歌うことになったんです。
私にとって転機はやっぱりサンレモ音楽祭から2年後の67年2月に出した「小指の想い出」です。帰ってきてからはカンツォーネばかり歌っていて、3人娘の中では私が一番出遅れていました。それでなんとかしようと思った事務所が歌謡曲を歌わせようと持ってきてくれたのが「小指の想い出」でした。
最初は島倉千代子さんの「小指と小指をからませて」で始まる「恋しているんだもん」みたいなかわいらしい歌かなと思ったのに、違っていたから私はふてくされちゃって。作詞の有馬三恵子さんも歌詞の説明をしてくださったけど、私はウンでもスンでもなくて。レコードが発売されて「すっごくいい歌だね。セクシーだしね」と言われて、「セクシー」に拒否反応もあってしばらくは歌いませんでした。ところが、北海道や九州の有線放送で火がつき出して、5、6月に全国でヒットし、マネジャーに「いつまでもわがままを言うんじゃない」と怒られ、いやいや歌ったというのが真相ですね。でも、レコード大賞の歌唱賞はうれしかった。歌がヒットして、生活がガラリと変わっちゃいましたけど(笑)。