老人運動能力が過去最高も 「60歳からのスポーツ」に潜む危険
老人の運動能力が過去最高を記録して話題になっている。スポーツ庁が65~79歳の高齢者の握力や上体起こし、開眼片足立ちなど6項目を採点したところ、65~69歳と75~79歳の男子の数値が過去最高に達した。同庁は「中学、高校、大学のクラブ活動などで運動を経験した人のほうが体力を維持できています」(健康スポーツ課)と説明する。
老人の運動能力が伸びたのはめでたいニュース。だが、体力増進が長寿に結びつくかというと、事はそう単純ではない。
「運動能力と寿命は別問題。逆効果の場合もあるので注意してください」とは医学博士の米山公啓氏だ。
「長生きを目指して50代後半からスポーツに打ち込む人もいますが、やり過ぎは危険です。マラソンやジョギングで体に負担をかけ過ぎると心筋梗塞、狭心症、不整脈を招き、寿命を縮めてしまいます。とくに要注意なのが野球などの球技。ベース間を全力疾走するのは無酸素運動だから体の負担が大きい。ここに“ヒットを打たなければならない”という精神的ストレスがかかって心臓を圧迫してしまいます。米国ではワールドシリーズに出場した野球選手が早死にする確率が高かったとの研究結果が報告されているほどです」