リスクは健康な人の約3倍 糖尿病が「難聴」を引き起こす
こう言うのは、糖尿病専門医で「AGE牧田クリニック」(東京・銀座)の牧田善二院長だ。
日本でも新潟大学医学部の研究チームが「糖尿病と難聴」について、米国の医学雑誌に報告している。
合計2万194人を対象にした13件の研究論文を分析したところ、ほぼすべての研究で糖尿病と聴力障害との関連性が明らかになったという。糖尿病の人は、そうでない人より聴力障害リスクが2.15倍高く、60歳未満ではそのリスクは2.61倍に上昇した。
「驚かれる人もいるかもしれませんが、これらの数字は、実態より低く見積もられている可能性があります。糖尿病による難聴の特徴は、多くが中程度で、60歳未満の若い人に多い。彼らには“難聴はお年寄りの病気”というイメージが強い。聴力が衰えても、それを糖尿病と結びつけて考えておらず、潜在的な患者数はさらに多いかもしれません」
■新たな病気を呼び起こすことも
それにしてもなぜ、糖尿病の人は難聴になりやすいのか?
「難聴は大きく2つに分類されます。外耳や内耳の音を大きくして伝える伝音機構の障害による『伝音難聴』と、内耳の感覚細胞から大脳までの音を感知する神経の障害による『感音難聴』です。糖尿病による難聴は、内耳の神経や血管が糖尿病によって損なわれるために発症するとみられていることから、感音難聴だと考えられています」