「認知症専門病院」は精神病院だった
「男性スタッフに押さえ込まれるように、小さい窓がついた隔離部屋に父親は入れられました。その後、4人部屋へ移されましたが、ベルトのようなもので腰がベッドに固定され、足も布で縛り付けられました。痛がるので“緩めてくれますか”と頼むと、抜けるからダメだと、かえってきつく縛られました」
差し入れの食料はチェックされ、隣のベッドでは「帰せ!」と泣きわめくおばあさん。この状況では、健康な人でも心身が壊れるのではと、Aさんは思ったという。
とにかく父親を出そうと老健施設に片っ端から電話したが、そういう患者を受け入れてくれるところはない。3カ月目に別の病棟へ移動。そこはプレハブ造りのような建物で大部屋にベッドがずらり並べられ、カーテンの仕切りもない。そんな中で、オムツ交換などがされていた。
「いろんな人の手を借りて、なんとか退院させて在宅介護ができるようになりましたが……。“認知症専門病院”が、実は精神病院だったと知ったのは、入院させてしばらく経ってからでした」
Bさんが80代の父親の異変に気付いたのは昨春だった。自宅近くの中規模病院へ連れて行くと、神経内科での検査の結果、右海馬に小さな梗塞が見られ、入院して治療を受けることになった。