治療薬急激進歩も ほくろのがんは暴れ出すと手に負えない
主婦のBさん(58歳)は、「2カ月ほど前から右の頬のほくろが大きくなった気がするんです。もともと大きかったのですが、なんとなく飛び出してきたようにも思う」とのことで、まず自宅近くの皮膚科医院を受診、紹介されてきました。約1.5センチの大きさで、皮膚科で切り取って病理診断の結果、悪性黒色腫と確定しました。
Bさんは元気そうに見えました。しかし、CT等の検査により、すでに肺と縦隔に転移が認められています。化学療法が適応とのことで、腫瘍内科に入院となったのです。「ダカルバジン」という抗がん剤を中心に化学療法が行われましたが、さらに病気は進行して脳に転移し、急激に胸水がたまり、心嚢(心臓を包む袋)にも及びました。
呼吸困難を軽減するために胸水を抜く処置をしましたが、約700ミリリットル抜いたその胸水は墨のように真っ黒でした。その後も病状は急激に悪化、あれよあれよと進行していき、担当医としては「こんな悪いがんがあるのか」と思うほどでした。
Bさんを担当させていただく以前の患者さんでも、転移のある悪性黒色腫は、出来たところは1センチほどの小さながんなのに、しばらくおとなしくしていても「いざ、暴れ出すと手に負えなくなる」という印象がありました。手術後の再発予防のため、インターフェロンも使用されてきましたが、抗がん剤が最も効きにくいがんのひとつです。