「食べる力」は取り戻せる “不可能”診断に2つの問題点
■ハードルが高すぎる診断法
経口摂取が可能かどうかを診断する際、一般的に行われるのが、内視鏡を喉に挿入して嚥下機能を見る「嚥下内視鏡検査」や、検査用食品を飲み込みレントゲンで嚥下機能を見る「嚥下造影検査」だ。
小山氏は、「受けたことがありますが、呼吸もできず、痛くてつらい検査でした。健康な人でもうまく飲み込めない。脳障害があったり認知症の人には非常にハードルが高い」と話す。
たとえるなら、「歩く機能が衰えた人に、いきなり100メートル走をさせ、タイムが○秒以下なら『自力歩行は不可能』と診断するようなもの」だという。食べる力が落ちたなら、しかるべき練習が必要。寝たきりで意識が朦朧とした段階で検査のみが優先される場合も少なくない。
■誤った食事介助
小山氏は全国各地で食事介助のセミナーを行っているが、「医療・福祉関係者も含めて、95%が誤った食事介助をしている」との実感があると話す。
たとえば「姿勢」だ。食事介助を受ける人が、あごを上げたり横を向いたりする姿勢では、誤嚥が起こりやすい。「食べ物が目で見えること」も重要。視覚を遮るようにしてスプーンを口元に運べば、介助を受ける人は口を開けるタイミングをつかめず、誤嚥しやすくなる。