患者が改めて教えてくれたエビデンスに基づく手術の重要性
手術は無事に終わり、症状も改善されて患者さんは退院されました。しかし、手術から12年後、その患者さんが80歳を越える頃に心臓と足に同じ症状が再発し、再手術が必要な状況になったのです。非常に動脈硬化が強い患者さんだったのですが、バイパスに使った左内胸動脈は太く成長していたものの、もう片方のバイパスに使った足の静脈は詰まっていました。さらに、右足のバイパスに使った人工血管も詰まっていたうえ、左足の血管も詰まってしまっていました。
心臓の方はカテーテル治療が行われ、乗り切ることができました。しかし、足の方は両足ともバイパスを作り直さなければなりません。最初の手術で作ったバイパスはもう触れないため、今度はお腹を開き、腹部大動脈から両足の血管に、合計4カ所のバイパスを新しく作りました。前回の手術の影響もあり、とても大がかりな手術になってしまったのです。
2度目の手術も成功し、足の脈もきれいに表れるようになりました。ただ、患者さんには大きな負担を強いることになりました。
振り返ってみると、心臓の方は最初の手術でエビデンスにのっとったバイパス手術を行っていたので、狭心症が再発してもカテーテル治療で乗り切ることができたといえます。しかし、足の方はそうではなかったため、大変な状況下での再手術を招いてしまったのです。
手術を行う際は、大規模データによって治療効果が確認されている、エビデンスにのっとった方法を選択しなければならない。
その患者さんは私に、それをはっきりと教えてくれました。