著者のコラム一覧
高橋三千綱

1948年1月5日、大阪府豊中市生まれ。サンフランシスコ州立大学英語学科、早稲田大学英文科中退。元東京スポーツ記者。74年、「退屈しのぎ」で群像新人文学賞、78年、「九月の空」で芥川賞受賞。近著に「さすらいの皇帝ペンギン」「ありがとう肝硬変、よろしく糖尿病」「がんを忘れたら、『余命』が延びました!」がある。

ミニ・ゴジラを冷凍させる瞑想をやっている

公開日: 更新日:

 胃がんを通告されたのは、2013年4月の65歳の時だ。医者に言われるまま、食道がん手術をした半年ほど後のことだった。

 その時、私は妻とグアム島に行っていた。妻の携帯電話に病院から「至急、日本に戻ってきてください」と連絡が来た。「どうも、胃がんができているみたいなんです」という説明だった。

 私は「手術はしない」と答えた。こちらの都合も考えず、がんなら手術するのが当然と言わんばかりの相手に、すぐに戻ってこいとは何だと腹が立った。妻は「いいの?」と心配したが、「グアム島で下痢しているんだ。蛇に怯えながらクソをする男の悲しさが分かるのか!」と続けた。

 妻は病院で「手術しないと半年後には大変なことになる」とずいぶん脅かされたらしい。真っ青な顔をした妻の姿を今も覚えている。

 しかし、医者が言う半年どころか、4年半近くが過ぎた今も私は生きている。

 要するに、がんを冷凍しているのだ。朝起きると、私は瞑想するのが日課になっている。巨大なゴジラ(がん)が太陽を覆い尽くすかのように浮き上がってくる。そいつが、放射能を吐きながら私の胃の中に入ってくる。その瞬間、胃の中にいるミニ・ゴジラを冷凍するイメージだ。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇