上咽頭がん<4>「今は命の尊さをかみしめています」
1つ目は、通院3年目の頃、担当医師から「鼻を手術しましょうか」と、言われた。
高橋さんは30年来「慢性鼻炎」の持病があり、ギョーザや納豆を食べても少しもにおいを感じない。一日中鼻詰まりの状態で、そのため、鼻の穴から挿入するポンプ式スプレーの鼻炎薬が手放せなかった。
「この鼻炎が上咽頭がんを誘因したと思いませんが、鼻の手術は長い間、顔の皮膚をべロッとむくと思い続けておりました」
ところが医師は、「いまどきそんな手術はしませんよ」と一笑し、鼻の穴に内視鏡を挿入し、約40分の手術で、“鼻茸”を全部切除してくれたのである。
「いやあ、空気のにおいを何十年かぶりに味わいましたね。上咽頭がんが完治するのと同じくらいにうれしかったです」
さらに脳大動脈の2本に、血栓が詰まっていたことが明らかになった。
ただし医師からは「手術は、上咽頭がんが完治し、『5年生存』の期日を迎えた後にしましょう」と言われていた。