元祖“ムキムキマン”対馬誠二さんはスキルス性胃がんを克服
「対馬さん、これはスキルスです」
そう医師から言われたとき、自分でも不思議なくらい冷静でした。「ああ、そうなんだ」って感じです。
手術をしたのは6年前になります。その半年ぐらい前に友人の勧めで胃の内視鏡検査を受けてみたら「再検査を受けたほうがいい」と言われてしまって、ちょっと困ったんです。
実は、長年の主治医に内緒で受けた検査だったので、報告しづらくて……。何を隠そう私は健康自慢で、まめに検査を受けていたんです。現に68歳のそのときまで、病気らしい病気は一切ありませんでした。
再検査を勧められた話を主治医にすると、初めは「そんなもの、しなくていい」と言っていたものの、結局、虎の門病院を紹介してくれて再検査を受けることになりました。細胞を取って調べる検査でしたが、1カ所だけではなく何カ所も採取するので、「あれ?」と思いました。「これは何か引っかかったな」と直感したんです。
結果は、胃の上部にできた「ステージ3のスキルス性胃がん」でした。「早く手術した方がいい」ということで、さらなる検査をしつつ前倒しで手術の段取りを組んでくれました。でも、その手術を前日になってキャンセルしてしまったんです。いや、もう周りから避難囂々でしたよ(笑い)。
私、こう見えていろいろ本を読むんです。で、その頃読んだ本に「がんは手術しないほうがいい」といったことが書いてあったんですよ。ステージ3の胃がん。しかも、たちの悪いスキルス。胃の下部にできたのなら一部残すことができても上部だと全摘出になる。抗がん剤で体力も免疫力も失ってしまう……。そんな情報を目にしてしまったものですから、手術しない決断をしてしまったんです。「これ以上、進行すると、手術できなくなりますよ」という医師の言葉にも耳を貸しませんでした。
でも、その後、友人知人に「なんで、キャンセルなんかしたんだ」とケチョンケチョンに言われまして(笑い)。
あまりにもうるさいので、面倒になって「分かった、すりゃあいいんだろう」と半ばやけっぱちで手術を受けることにしたんです。
手術は7時間以上に及びました。詳しいことはよく分かりませんが、リンパ節への転移もあったようですし、胃を全摘したところに腸の一部を切り取ってつなげたりしたようです。目覚めると、体のあちこちに管がつながれていました。それでも、翌日には必死に起きて歩きました。ベッドから起き上がるだけでも腹筋を使うので大変でしたが、日頃、トレーニングを欠かしていなかったので、何かやらないと気持ちが悪くて……。
その後の抗がん剤治療は1年間続きました。医師には、「口の中がただれたり、吐き気で食べられないといった副作用が十中八九ある」と聞いていたので、覚悟はしていました。でも、全くなかったんです。逆に食欲があるので、医師も「おかしいな」と首をかしげるほどでした。