死の恐怖を乗り越える術 頭で考えるのではなく“体に聞く”
「……マンション近くの小川まで来ると……秋は深まって、川沿いの木は風にゆれて葉を落していました。足もとの落ち葉をひろって指でもてあそびながら、川を眺め続けました。川の水はところどころ渦を巻きながら流れていきました。水は渦の所で巻き込まれながらも、先へ先へと流れていきます。
……どれくらいそこで過ごしていたか分かりませんが、気づくと足もとに枯葉がたくさん落ちていました。大量の落ち葉を見て、ふっとこう思いました。『死は特別なことではなく自然なことだ。そして僕も自然の一部である。だから僕が死ぬのは自然なことだ』
……この旅行に満足し……もう少しで解決できる所まで問題を追い詰めたと思っていたのに、死を考えることが僕の中では必要のないことになった感じがして考えようとしませんでした」
「それから数日が経って、駅前の商店街に買い物に出かけました。横断歩道で信号待ちをしていると、視野の左上から光が射しました。太陽だったと思うのですが、見上げて光が目に入った瞬間に、『子どもだ、人生の可能性は子どものことだったんだ』と気づきました。僕の命から次の命に流れていく強いつながりを感じました。そこにはとても深い感動がありました」