生後2カ月でお腹にがんができた女の子に思った「命の価値」
Tちゃんを置いて帰る医師と看護師も、そしてこれから担当する医師と看護師も、けいれんが起きた時の処置をはじめ、これから起こりうる可能性のある、あらゆることを話しておきたい、聞いておきたいと、双方とも一生懸命です。
スタッフの誰かが言いました。
「Tちゃん、いらっしゃい。よく来てくれました。仲良くしましょ。Tちゃん、1歳おめでとう」
Tちゃんは、眠ったままのように見えて、まったく反応はありません。それでも、苦しそうな表情ではありません。穏やかに、リラックスしているようにも見えました。
■みんなが一緒になって共に病気と闘ってきたことが分かった
なぜか分かりませんが、私はふと思いました。
「そうだ、この子はこの世に生まれてきた意味があったのだ」
最初は「この子は、生まれてからずっとずっとがんで治療を受け、途中で意識もなくなって、それで1年……。そしていまや死が近い。なんのために生まれてきたのか。この子の命は何だったのか?」という考えが頭に浮かんだのですが、「そうではない。この子が生まれた価値はあったのだ」と思ったのです。