木綿豆腐の2.5倍のカルシウム 3倍の鉄分を同じ風土食の梅ソースで

公開日: 更新日:

抗酸化成分サポニン、コレステロール低下作用レシチンを含む健康食

 私は、大学、大学院、ポスドク(研究見習)、と独身貧乏生活が長く続いたので、よく自炊をしていた。

 冷凍庫には、細く切った油揚げをジップロックに入れて常備していた。お味噌汁の浮き実に少々、炒めものに少々、といつでもどこでも使えるので、大変重宝した。油揚げはダシや汁の味をよく吸うので、何にでも馴染んだ。実際、油揚げは、きつねうどんにも、いなり寿司にも、おでんの巾着にも利用され、広く食材として使われている。

 油揚げはその名のとおり、薄く切った豆腐を油で揚げたもの。これが庶民の味として普及したのは、江戸時代の半ば、それまで明かりをともすための高級燃料だった油が、大豆や菜種、ごまなどから比較的安価に作れるようになってからのこと(これら油を搾るための植物を油糧種子という)。

 そして各地で、その風土に合わせたご当地油揚げが生まれていった。私は、京都の下宿で学生生活を送っていたので、大ぶりで上品な味の「京揚げ」に親しんだ。新潟には「栃尾揚げ」が、宮城には「三角定義揚げ」が、愛媛には「松山揚げ」が、それぞれ名物としてある。

 豆腐を油で揚げているからその分カロリーはやや増えるが、健康食であることは間違いない。含まれるサポニンには抗酸化成分、レシチンにはコレステロール低下作用、イソフラボンには骨粗しょう症の予防効果があるとされる。

▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。

※この料理を「お店で出したい」という方は(froufushi@nk-gendai.co.jp)までご連絡ください。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…