著者のコラム一覧
和田秀樹精神科医

1960年6月、大阪府出身。85年に東京大学医学部を卒業。精神科医。東大病院精神神経科助手、米カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。著書多数。「80歳の壁」(幻冬舎、税込み990円)は現在、50万部のベストセラーに。最新刊「70歳の正解」(同)も好評発売中。

実の息子よりも嫁の来訪を喜ぶ親も 多く接することが大事

公開日: 更新日:

 家族を含めて見舞いに訪れる人が少なければ「機嫌よさの種」に触れる機会が減ることは当然だ。さらに、病院のスタッフとのコミュニケーションもフレンドリーさを欠けばお互いにストレスが増す。自らが機嫌よさの芽どころか種をスポイルしていると言えなくもない。脳にいい影響を与えないことは明白だ。だから、子どもとしては、この「機嫌よさの種」の提供を忘れないことだ。

「先日、親を見舞いに行って愕然としました」

 私の知人男性の話だ。久しぶりに親が入居する介護施設を訪れたときのこと。施設のスタッフが、共用サロンでくつろぐ彼の母親に来訪を伝えた。

「大好きな人が来ましたよ」

 母親はこう言い、表情は一瞬、ほころんだが、長男である知人を認めるとガッカリした表情でこうささやいたという。

「なんだ、K美さんじゃないのか」

 K美とは長男の嫁の名前だ。知人の母親にとって「大好きな人」とは自分が腹を痛めて産み、育て上げ、60年以上も一緒に暮らした息子ではなく、若いころには嫁姑の争いもしばしばだった彼の妻だったのである。いろいろ葛藤はあったにせよ、最終的に自分に寄り添ってくれたのはお嫁さんだったのだろう。実の母親の反応に、それまでの親への接し方を悔やむとともに、妻への感謝の思いをかみしめたという。

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