「治療が無駄だったのか」を考えながら10年間も生きてきた
その一方、Aさんは自分が入院するたびに「無駄な延命はしたくありません」と言い続け、この治療が無駄だったのか、無駄でなかったのかを考えながら、10年間も生きてきたのです。
■「無駄な延命」なんてあるのだろうか
今回、勧められた新しい薬で治療することも、無駄な延命のような気もすると思いながら、長年まじめに仕事をしてきたから、また元気になって、好きな釣りに行くのも許されるのではないかとも思っているといいます。そして、さらにこう続けました。
「それにしても、自分で言っておいて変ですが、『無駄な延命』なんて誰が決めるのでしょうか。『無駄な延命』なんてあるのでしょうか? 『誰の命も尊く、無駄な命などはない』とよく言われます。結局、それでも私の結論は、一番心がすっきりするのはI先生のところで治療を受けて、I先生にお任せし、最後はI先生に看取ってもらう。私はI先生のもとでは無駄な延命も何もないのです。私は最後まで看てくれるI先生がいてくれて安心です。幸せです。大病院に行くつもりはありませんが、I先生が行くようにと言われたら行きます」