世界的科学誌で報告「膵がん」はお腹のカビが原因だった?
とはいえ、人間が許容するカビの量はわずか。その増殖は腸内に数多く寄生している細菌により抑制されている。
「大腸や小腸などの腸管には500種類以上の細菌が100兆個います。細菌は腸壁の表面にあるムチンと呼ばれるネバネバの層にいてその様子が草むらに似ているので腸内細菌叢と呼ばれています。それは指紋のように人によって菌の種類や分布が違います」
菌には人間にとって有益な「善玉菌」と有害な「悪玉菌」、さらには善玉にも悪玉にもなりうる「日和見菌」があり、健康なときはそのバランスが取れている。ところが、少しでも悪玉菌が増えると日和見菌はそれに近い働きをするために数%の悪玉菌が増えることで、結果的に数十%の変化が起きるという。
■抗生物質の乱用でカビが増加
「善玉菌は悪玉菌の成長を抑える抗菌物質を分泌したり、病原体の体内への侵入を防いだりする作用があります。ほかにビタミンや酵素を作ったり、ミネラルを吸収しやすいかたちにしたり、食物繊維を消化して、短鎖脂肪酸といわれる腸の上皮細胞の材料になる栄養素を作り出したり、女性ホルモンや脳に影響するセロトニンを産出します。腸内でカビが増えることは、その分、人間に有益な善玉菌が減ることを意味し、多くの弊害が表れることになるのです」