著者のコラム一覧
尾上泰彦「プライベートケアクリニック東京」院長

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

“袋”に水がたまる「陰嚢水腫」って何?精巣がんとの違いは

公開日: 更新日:

 先天的な陰嚢水腫は1歳までに自然治癒が期待できますが、3歳を過ぎても消失しない場合はそのまま残ります。また女児でも同じ現象が起こる場合があり、陰嚢がないのでソケイ部(股の付け根)に腹水がたまり「ヌック水腫」といいます。

 一方、大人になってから起こる後天的な陰嚢水腫は、腹腔と完全に分離されていて腹水の交通路がないので「非交通性陰嚢水腫」と呼びます。原因は、性感染症による炎症やケガなどがきっかけで生じることがあり、たまる水は腹水ではなく、主にリンパ液などの体液です。

 陰嚢水腫は「命に関わることがない」と言いましたが、最も注意しなくてはいけないのは「精巣がん」との鑑別です。どちらも痛みがなく陰嚢が腫れたように大きくなりますが、違いは手で触ったときの感触です。

 精巣がんの場合は、がんが睾丸にできて腫れているので触ると硬い。陰嚢水腫の方は、風船のようにブヨブヨして軟らかい。

 それに陰嚢水腫は水がたまっているので、ペンライトで光を当てると陰嚢全体が赤く透けて見えます。他の疾患では、このような透光性はありません。

 子供も大人も水腫が消失しなければ手術で治療します。交通性はソケイ部を切開して、腹水の通り道を切り離して縫合します。非交通性は陰嚢を切開して水を出し、不要な水腫壁を切除して縫合します。

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