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宮沢孝幸京都大学ウイルス・再生医科学研究所准教授

京都大学ウイルス・再生医科学研究所附属感染症モデル研究センターウイルス共進化分野准教授。日本獣医学会賞、ヤンソン賞などを受賞。小動物ウイルス病研究会、副会長。

コロナ終息の条件とされるが…ワクチン開発は本当に可能か

公開日: 更新日:

 すべてのウイルスに対してワクチンの開発が可能かどうかというと、そうではない。例えば、ヒト免疫不全ウイルスHIVは、1983年夏に発見されたが、発見後37年経った今も、いまだワクチンはできていない。

 基本的にウイルスに感染した個体の一部が発症後に回復し、ウイルスを完全に排除するのであれば、ワクチン開発の見込みは高い。しかし、ウイルスに感染しても、ほとんどの感染個体がウイルスを排除できなければ、そのウイルスに対するワクチン開発の見込みは低くなる。

 感染個体でウイルスに対する特異抗体が誘導されると、抗体がウイルスの感染を阻止(このことを「ウイルス中和」と呼ぶ)し、ウイルスが体内から消失する。新型コロナウイルスも感染した人の多くは抗体を産生し、ウイルス感染から回復する。しかしながら、一部の人は抗体が誘導されていても重症化する。逆に新型コロナウイルスに対する抗体が十分に誘導されていなくても、ウイルスから回復している人もいる。つまり、回復機構はいまだにわかっていないのである。

 実は抗体には、良い抗体(中和抗体)と、役に立たない抗体(非中和抗体)がある。さらに厄介なことに、コロナウイルスでは一部の抗体が感染を増強する場合がある。これを抗体依存性感染増強(ADE)と呼ぶ。

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