新型コロナウイルス 細胞への侵入を許す新たな経路が浮上
世界的な科学雑誌「サイエンス」10月号では、英国のブリストル大学の研究グループと、ミュンヘン工科大学・神経変性疾患ドイツセンターの合同研究グループの2本の研究論文が掲載された。どちらも、フーリンで切断されたS1の断面に血管増殖因子のひとつである、ニューロピリン1(NRP1)が結合することで、ウイルスのヒト細胞への侵入を媒介しているという内容だ。
興味深いのはミュンヘン工科大学グループがNRP1により新型コロナウイルスの感染が進むとともにNRP1のモノクローナル抗体で感染を阻害することを示したと報告していることだ。本当ならNRP1を標的にした薬剤を用いれば、感染を抑えられる可能性がある。
さらに新型コロナウイルスの感染性について、ACE2、TMPRSS2およびNRP1の単独および組み合わせの感染効果や、NRP1の組織内での分布、新型コロナウイルスの組織移行性との関係を詳細に調べた結果、ACE2がほとんどない状態でもNRP1が存在し、ウイルスレベルが高ければ感染することが証明されたという。東邦大学名誉教授の東丸貴信医師が言う。