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小林秀行東邦大学医学部泌尿器科学講座准教授

1975年、東京都生まれ。2000年東邦大学医学部を卒業。卒後研修終了後に東北大学大学院医学系研究科病理病態学講座免疫学分野に進学。医学博士を取得。ペンシルバニア大学獣医学部にてリサーチアソシエイト。その後、東邦大学医学部泌尿器科学講座に復帰。2014年より現職。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本生殖医学会生殖医療専門医。専門は男性不妊症。noteにてブログ「Blue-男性不妊症について」を配信中。

1年以上子供ができなければ「不妊症」 原因の半分は男性

公開日: 更新日:

「子供は授かりもの、普通に夫婦生活を営んでいれば子宝に恵まれる」ーー大抵の夫婦はそう思っています。ですから、結婚して1年過ぎても子供ができなかったとしても「単にタイミングが悪いだけ。その気になれば子供はいつでも出来る」と考えます。自身が「不妊症」なんて思いもしません。

 しかし、結婚して1年経って子供ができない場合は「不妊症」の可能性があるとされます。普通に夫婦生活を営んでいれば、半年で6~7割、1年で9割、2年で10割が妊娠すると言われているからです。

 そもそも不妊症とは、妊娠を望む男女が避妊をしないで性交渉をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しないことを指します。この一定期間とは、公益社団法人日本産婦人科学会では「1年」と定義しています。しかし、昨今の晩婚化に伴い、男女の初婚年齢も上がってきています。

 1年経たないと不妊症の検査をしてはいけないということではありません。米国生殖医学会では、女性の年齢が35歳以上の場合は、6カ月経過しても妊娠を得られない時は検査を推奨しています。

■男性不妊症専門の泌尿器科医は全国で72名

 わが国では約5.5組のカップルに1組が不妊症の問題に悩んでいると言われています。不妊の原因は女性だけに限りません。WHO (世界保健機構)による統計では約半数で男性に原因があるとされています。しかし、現状は不妊症の治療は女性主体で、男性側に問題があった場合でも、専門に診察できる施設や医師は非常に少ないのが実情です。

 一般社団法人日本生殖医学会生殖医療専門医は全国で920名が認定されていますが、多くは産婦人科医です。その中で男性不妊症を専門にしている泌尿器科医はわずか72名です(2021年4月1日現在)。

 男性不妊症が不妊症の原因の約半数を占めているにもかかわらず、男性不妊症の専門医はわずかであることがお分かりかと思います。

 男性不妊症を診断するためにまず行なう検査は精液検査です。実際の外来だと、まず婦人科クリニックで精液検査を受けて「精液所見が不良」とのことで紹介を受けることが多くあります。

■自宅での精液採取の落とし穴

 33歳のAさんは精子の動きが悪いとのことで来院されました。婦人科クリニックでは、自宅で精液を採取して持ち込む場合が多い傾向にあります。自宅からクリニックへ精液を持ち込む際に、温度や時間などに注意を払わないと精液所見が不良になることがあります。Aさんもそうでした。院内で精液を採取してもらい、精液検査を行なったら、正常所見でした。可能であれば、クリニックや病院内で精液を採取することが一番よい条件となります。

 35歳のBさんは、「精子の濃度が低い」とのことで来院されました。精液を採取するための禁欲期間を確認したら、前日に射精しており、1日しか空いてないとのことです。禁欲期間が短いと精液所見が不良に出ることがあります。適切な禁欲期間は2~5日以内とされています。Bさんに禁欲期間を説明し、お話した禁欲期間を保って精液検査を行なったら正常でした。

 このように、精液を運ぶ条件や、精液を採取する禁欲期間が適切ではないと、せっかく精液検査をしても結果が悪く出てしまうことがあります。精液検査は、男性不妊症を調べる上でまず始めに行なう重要な検査です。ぜひとも、いい条件での精液採取に心掛けるようにしましょう。また、精液検査は2回以上行なうことを勧めています。1回の精液所見が不良でも、もう一度精液検査を行なうことをお勧めします。

【連載】男性不妊症のすべて

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