著者のコラム一覧
尾上泰彦「プライベートケアクリニック東京」院長

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

暗黒街の顔役アル・カポネは晩年「梅毒悪化」に苦しんだ

公開日: 更新日:

 今年2月に公開された映画「カポネ」では、その後半生が描かれています。カポネは脳梅毒の影響で痴呆症状がひどく、大小便を垂れ流すために医師がおむつを用意したほどだったそうです。ちなみに、民間人で初めて梅毒の特効薬「ペニシリン」を使ったのはカポネです。しかし、梅毒末期だったため、効果は上がりませんでした。そして梅毒に苦しみながら1947年1月25日に脳卒中に伴う肺炎で亡くなったのです。

 また、カポネはマラリアによる「発熱療法」も行ったといわれています。20世紀の始めに神経梅毒を治療するために施されていた治療法で、マラリアにわざと感染させて高熱を出させ、神経梅毒が引き起こす麻痺性認知症を治すという、今では考えられないような非倫理的なやり方です。

 この治療法を考え出したのはオーストリアの精神科医、ワーグナー・ヤウレックです。彼が担当した神経梅毒患者の中に熱を出した後に症状が改善したケースがあったことから、発熱が神経梅毒を改善すると考えたのです。彼は高熱を発する病気を調べ、密かに自分の患者を使って実験します。そこで「キニーネ」と呼ばれる特効薬があるマラリアに辿りついたのです。彼はマラリアにかかった兵士から採血し、その血液を神経梅毒患者に注射してマラリアに罹患させ、キニーネで治療する行為を繰り返します。その結果、半数は症状が改善したと言います。ただし、マラリアで亡くなる人も多かったそうです。

 その後、ペニシリンが普及したため、危険な発熱療法は行われなくなりました。なぜ発熱療法が効いたのかのは今もわかっていません。ちなみに、ワーグナーはこの治療の発見により1927年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    相撲協会の逆鱗に触れた白鵬のメディア工作…イジメ黙認と隠蔽、変わらぬ傲慢ぶりの波紋と今後

  2. 2

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  3. 3

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 4

    《2025年に日本を出ます》…團十郎&占い師「突然ですが占ってもいいですか?」で"意味深トーク"の後味の悪さ

  5. 5

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  1. 6

    中居正広の女性トラブルで元女優・若林志穂さん怒り再燃!大物ミュージシャン「N」に向けられる《私は一歩も引きません》宣言

  2. 7

    結局《何をやってもキムタク》が功を奏した? 中居正広の騒動で最後に笑いそうな木村拓哉と工藤静香

  3. 8

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  4. 9

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  5. 10

    高校サッカーV前橋育英からJ入りゼロのなぜ? 英プレミアの三笘薫が優良モデルケース